■名神大社を結んでできる図形④2022.08.11
古代の官社である名神大社を結ぶと『経線』を表す等辺を持った概ね同形の二等辺三角形が、日本列島を覆うように表れる。
特に畿内を中心に表れる二等辺三角形は、形の整った五芒星を構成している。
【若狭彦神社-阿射加神社-熊野本宮大社-大麻比古神社-伊和神社】
このうち南北に貫く【若狭彦-熊野本宮】ラインは経線を表しているのではないか?については以前申し上げた。
今回は、畿内を中心に東は尾張・美濃、西は吉備あたりまでの領域を詳しく考察していきたい。
(1) 五芒星とタテ・ヨコ・ナナメの線
まず、名神大社ではないが、西日本では2番目の高さを誇る標高1955mの四国の名峰『剣山』に注目したい。起点の目印としては申し分ない。
① 剣山よりまっすぐ東へ線を引くと、そこには五芒星の一点、熊野本宮大社がある。
これを第一の緯線(1)とする。
熊野の南北線は経線となるラインなので、まっすぐ北には若狭国一之宮若狭彦神社がある。
その若狭彦から、但馬国一之宮・出石神社~因幡国一之宮・宇倍神社~伯耆国一之宮・倭文神社が東西に並び、これも『緯線』(5)となる。剣山からスタートして逆コの字のラインができた。
② 次に剣山よりまっすぐ北へ線を引くと、備前国の安仁神社に当たる。(経線E)
元々、こちらが備前国一之宮だったともいわれている。
安仁神社よりまっすぐ東へ線を引くと、ちょうど明石海峡を通り、摂津国一之宮住吉大社にぶつかる。おおよそ五芒星の中心付近ともいえる。
さらにその延長線上には五芒星の一点、サルタヒコを祀る阿射加神社に行き着く。こちらも東西を結ぶ『緯線』(3)とみなせるだろう。
③ 最後に剣山より斜め45度の角度(平面上)のラインには、同じく五芒星の一点、阿波国一之宮大麻比古神社があり、その延長線上には
大麻比古~淡路国一之宮伊弉諾神宮~明石海峡の播磨国垂水の海神社~丹波国一之宮出雲大神宮と並び、大変興味深いラインとなっている。
出雲大神宮は東西、美作国一之宮中山神社、播磨国一之宮伊和神社(五芒星の一点)、山城国一之宮賀茂神社と同じラインにありこれも緯線(4)。
さらに伊弉諾神宮のまっすぐ東には伊勢の神宮があり、これも緯線(2)となりそうだ。
イザナギ−アマテラス ラインは親子ラインだ。
ここに挙げたものだけでも5本の緯線があり
国土地理院地図サイトの方位角計測機能で確認すると、きわめて90度に近い値となる。
経線は若狭彦-熊野本宮ライン(経線A)以外にも
丹後国一之宮籠神社 - 紀伊国一之宮日前・国懸神宮 経線(B)
但馬国一之宮出石神社 - 淡路国一之宮伊弉諾神宮 経線(C)
因幡国一之宮宇倍神社 - 阿波国 忌部神社(論社) 経線(D)
が列挙できる。
(2) オリオン座から延びる線
第1回目で名神大社を結ぶと星座を表すのではないか?で取り上げた、東海地方の名神大社10社を結んでできるオリオン座(参宿)。
尾張国一之宮 真清田神社 および大神神社、大神社がオリオンのベルトの三ッ星
伊勢国二之宮 多度大社(=ペテルギウス)
これらを結んだ線分の延長線が方向を示すベクトルになってるのではないか?
① 真清田(ニギハヤヒ)-南宮 ⇒若狭彦~籠 ニギハヤヒ・トヨウケ
② 大縣(スクナビコ?)-真清田 ⇒出雲大神宮 オオクニヌシ
③ 大神(オオモノヌシ)-多度 ⇒大和国一之宮大神神社 オオモノヌシ
④ 大縣-熱田(三種の神器【剣】) ⇒神宮 アマテラス・三種の神器【鏡】
⑤ 南宮-多度 ⇒伊射波神社 ワカヒルメ
など、これら結んだ線には何か意味があるように感じる。(※祭神については諸説あり アメノホアカリとニギハヤヒを別とする説もある)
(3) まとめ
今回は緯線や経線になる目印となるような神社がクローズアップされた。また剣山には名神大社はないのだが、剣山といえば、祭祀を司る氏族である忌部氏のうち、阿波忌部氏や讃岐忌部氏との関係も気になるところだ。
安仁神社からまっすぐに東へ向かうと、まるで海の門のような明石海峡を通り、住吉大社へたどり着くこのラインは特に興味深い。
建築用語に水平や中心など基準となる線を出す意味の『墨だし』という言葉があるが、住吉=スミノエ=墨の江(港)?がふと頭に浮かんだ。
ちなみに墨だしする道具『墨ツボ』は紀元前からあるそうだ。
これはあくまで妄想に過ぎないが、住吉大社の位置が墨だしにとても重要だったのではないかと思った。